幕が降りた後に

トレッキーなジャズピアニストによる、ありとあらゆる「舞台」の覚書。守備範囲は講談、ミュージカル、ライブ、映画、洋ドラ、雑多です。

末廣亭11月下席千秋楽

今年の末廣亭11月下席には絶対に行くと決めていた。

そして出来れば千秋楽に行きたいとも。

 

これには少し理由がある。

 

まず私が初めて寄席に足を運び、初めて講談を聴いてハマったのが、

ちょうど1年前の11月30日だったから。

 

去年の今頃「昭和元禄落語心中」を観て、一度寄席に行ってみたいと思い、

予備知識が全くない状態でたまたま暇だった去年の11月30日。

 

わくわくしながら末廣亭に向かう途中、新宿三丁目駅末廣亭のポスターを見つけると。

そこに出演予定の方々が書いてあった。

そして見てみると。

 

トリの人始め「講談」の人が多い・・・

そしてトリの人は「長講 赤穂義士伝」と書いてある・・・

 

・・・やべぇ全く興味ないわ・・・

正直全く興味ないわ・・・忠臣蔵とか・・・

そもそも私落語聴く目的で行くつもりだったんだが・・・

え、ちょっと日を改める・・・?

 

と、本気で思いました。ええ本当にそう思いました。

 

が。思い立ったが吉日。

まあ落語家さんも出てるし・・・まあ行ってみるか・・・

 

と、予定通り末廣亭へと向かいました。

(今振り返るとここでの選択は人生最良の選択の一つだったと思います、ええ。)

 

そして入った途端に出ていらしたのが、

勢い良く笑いを交えながら「扇の的」をかけていらした鯉栄師匠。

そして中入り後に神田松之丞氏の「違袖の音吉」に一気に持っていかれ。

正直全く興味のなかった赤穂義士伝「荒川十太夫」、松鯉師匠の語りでじっくり堪能。

 

これが私の講談との出会いの日でした。

11月30日はそんな講談記念日でもあり、

今年もこのお三方が出られるから、というのもあるのですが。

 

もう一つの理由は先日神奈川県民ホールでの神田松之丞さんの独演会で、

松之丞さんの「荒川十太夫」を聴いたこと。

 

松之丞さんが「荒川十太夫」の冒頭を話始めた時に、

「あ!あの時の松鯉師匠がかけてた話だ!」というのはすぐに気づいたのですが。

とにかく印象が違う。

いや一年前だから単に私が松鯉師匠のバージョンうろ覚えなだけ??

松之丞さんは照明使ったりなんかして演出が違うから??

でもでも演出だけの問題???

 

思い出せんからもっかい松鯉師匠の「荒川十太夫」聴きに行こっと。

 

というのが今日行った理由です。

 

松鯉師匠の末廣亭11月下席の演目は予め公表されております。

「荒川十太夫」は討ち入りの後日談なので、確かに千秋楽にぴったり。

今年も千秋楽でやるよと発表されておりました。

 

 

というわけで夕方までに猛ダッシュで仕事を終わらせ

何とか鯉栄師匠に間に合い!

鯉栄師匠・松之丞氏共に堪能しまくり(こちらの感想は後述)

ついに松鯉師匠のきっかり一年ぶりの「荒川十太夫」。

 

 

やっぱりもう全体のムードから言って松之丞氏の「荒川十太夫」と違う。

いやそりゃ演者が違うんだから違うでしょ、と言ってしまえばそれまでなんだけど。

ただ一体何が違うのか、その正体が何なのか、

せめて自分なりの答えを出さないとなんだか気持ち悪い!

と今日はなんだか変な聞き入り方をしておりました・・・。

 

で、終盤で気づいたのですが。

これは完全に私のとらえ方でしかないので共感を得られるかわからないのですが。

 

一番の違いは「視点」なのではないかと思いました。

 

松鯉師匠の場合、あくまでずっとこの「荒川十太夫」の物語を

俯瞰しているような状態でお話されているような気がしたのです。

こう、空中からナナメ下を見下ろしているような、第三者的視点というか。

 

対して松之丞氏の「荒川十太夫」の印象は、

登場人物の目の前までぐぐぐっと観客を引き下ろしてくるような語りだったような気がします。

同じ地平で彼らの物語を目と鼻の先で見ているような感じ。

 

松之丞氏のその同じ地平で物語を見させるような語りは、

登場人物の心情がリアルにガツンと伝わってくるような感じがしました。

 

対して松鯉師匠の俯瞰的な視点からの語りからは、

この「荒川十太夫」という物語の美しさを感じられたように思いました。

 

あくまで個人の感想というか感じ方というか。

ただ、私なりの、私個人のその感じ方の違いの正体が見つかって、

なんとなくすっきりした思いでした。

ご本人様たちはそんなつもり一切ない、見当違いの感想かもしれませんが。

 

同じ話を違う噺家さんが話すのを聴き比べると面白い、

というのは落語の楽しみ方として聞いたことがありますが。

なるほどこういうことか・・・と納得した講談ファン2年目のスタートでした。

 

 

ちなみに他お二方の感想。

鯉栄師匠「任侠流山動物園」

ご本人開始早々このネタをかけたことを後悔してらっしゃいましたがw

私はこれが聴けてとてもうれしかった!です!

新作講談って初めて聞いたよ!そして実はこれタイトルだけ知ってたのですが

まさか動物たちの任侠ものだとは思わなかったww

けれど見せ場は古典の講談のやり方と変わらずでそれが素敵だなと。

 

松之丞氏「和田平助

今日この前に6席やったとのことで「もうどうでもいい」とお疲れモードww

のわりにマクラ超ノッてたのは流石だなと。

松之丞さんのマクラで久しぶりに大爆笑しましたww

本編もとにかく勢いと緊迫感のある話だったんですが、

家帰って講談入門読んだら「短くやろうというときにかける話」と。

なるほどだからマクラで延々木馬亭のインド人の話が続いたのか・・・。

 

こちらのお三方は今年は今日が聞き納めだなー。

まだ講談自体は阿久鯉師匠の独演会に年内行く予定です。

そして年明けは神田松之丞氏の「慶安太平記5日連続読み」。

こちら滅茶苦茶暗い話と聞いているので、

松之丞さんのお話で笑うのはしばらくラジオだけになるかな?

 

 

また来年も、再来年も。

松鯉師匠がご活躍のうちは、11月30日は毎年聴きにいけるといいな。