幕が降りた後に

トレッキーなジャズピアニストによる、ありとあらゆる「舞台」の覚書。守備範囲は講談、ミュージカル、ライブ、映画、洋ドラ、雑多です。

神田松之丞新春連続読み「慶安太平記」その2

 

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ようやく「慶安太平記」本編、感想書きます。

とはいえ5日分を事細かに書くほどの文章力がないので、

一日ごとに簡単にまとめます・・・

 

【1日目】

(マクラ:A日程にして初日にしか来なかったのに朝日新聞に書評を書いた

矢野誠一氏にひたすらおかんむり。)

「正雪の生い立ち」

「楠木不伝闇討ち」

「丸橋忠弥登場」

「忠弥・正雪の立ち合い」

 

「正雪の生い立ち」、正雪の幼い頃からの有能of有能ぶりで

周りが感心するような描写が多い中、ただ一人だけ

「この者を傍においてはいけません」と進言する者が。

「正雪ってやばいやつなんじゃあ・・・」と感じさせる、

幕開けとしてとても面白い一席でした。

 

そして「楠木不伝闇討ち」が正雪のサイコパスぶり炸裂。

師範代やってる道場の師匠を殺す完全犯罪ぶりがえぐい。

あと一度振った女が「人の者になると惜しい」とほぼ強奪する鬼畜ぶり。

面白いくらいにやばい人物なのはわかった、

けどこの調子であと4日サイコパス物語が続くのか・・・?

 

と恐ろしくなってきたところでの丸橋忠弥関連の2席。

これは丸橋忠弥のキャラクターも相まって笑いどころも多い話だった。

良かったサイコパス連続5日読みではなかった・・・

これにて丸橋忠弥、正雪一味の仲間入り。

 

 

【2日目】

「秦式部」

「戸村丹三郎」

「宇都谷峠」

 

個人的に「秦式部」は色んな景色が目に浮かんで好きでした。

晴れた夏の日、群衆を前に秦式部が皿回しで雨を降らせる描写が凄く美しくて躍動的。

そして実は今で言う気象予報士的な知識のある秦式部を利用して

雨乞いの儀式をする正雪。降らなかったら切腹

なんでもできる超有能でサイコパスな正雪、

流石に雨がなかなか降らないと焦るんすね。

その人間らしさが垣間見えるのもこの話の好きなところ。

「戸村丹三郎」も最初笑えたかと思ったら凄く悲しくなるシーンもあり・・・

と面白い一席だったのですが、

個人的にこれはやばい一席だと感じたのが「宇都谷峠」・・・!

これは凄かった。もう本当に不気味で怖くて。

正雪出てこない話ですが!

後に正雪の仲間となる怪力僧の伝達が上野から京都までお金運ぶ話。

そこで甚兵衛という謎の男に出会い、その2人の道中を描いた話なんですが。

この甚平がもう不気味で怪しくてもう・・・

安倍川のシーン最高だった・・・

かと思えば後半松之丞氏の新作「トメ」の老夫婦みたいなの出てくるしw

(あれは「トメ」のカメオ出演だと勝手に思うことにしました)

元々有名なお話だったそうですが、連続読みの中で聞けてとても良かった。

 

【3日目】

「箱根の惨劇」

「佐原十兵衛」

「牧野兵庫(上)」

「牧野兵庫(下)」

 

どれも正雪が仲間を加えていく話なんですが、

それぞれの話で正雪の意外な一面が見られるのが個人的に好きでした。

「箱根の惨劇」で伝達の大食いぶりをびっくりしながら眺める正雪。

「佐原十兵衛」で夜桜を愛でる正雪。

「牧野兵庫」で書を愛で、そして同じ書を愛でた牧野兵庫を介抱する正雪。

この日一日で「正雪はやばいサイコパス」というだけでない、

色々な一面が見られたのがとても良かったし連続の面白さの一つなのかも。

しかしどの話でも「途中で登場人物の性格が変わる」という現象がある、と

松之丞さんもマクラでお話されていたんですが、

私は牧野兵庫の豹変ぶりが特にショックでしたよ・・・どうしてこうなった・・・

 

【4日目】

「柴田三郎兵衛」

「加藤市右衛門」

「鉄誠道人」

「旗揚げ前夜」

 

ついに来ました「鉄誠道人」。私はこれが聴きたくて来たのです!

去年の博品館での独演会でこの話を聴いてとんでもなく衝撃を受けたのが

この5日連続読みに参加したきっかけと言っても過言ではない。

話の内容はとんでもなくエグくて正雪のサイコパスぶりが一番際立つ話。

全身真っ白、所謂アルビノの僧、鉄誠道人は大層お金が大好きな坊さん。

そこに正雪が「人々を救うために焼身自殺をして、免罪符を売ろう」

と金儲けの話をもちかける。「もちろん棺桶に細工をして逃げられるようにする」

として、見せかけの焼身自殺の儀式を行うことになるが・・・

・・・結末はお察しください・・・

というとにかくとんでもなくエグイ話なのですが私は最高に好きです。

びっくりしたのは博品館で聴いた時は焼身自殺の儀式のシーンで

太鼓や三味線を使っててそれがかなり凝った使われ方してて、

そこに感動してこの話が好きになったのですが。

今回はなんと鳴り物なし!なのに同じくらい引き込まれる!!

どっちのバージョンもすごいしどっちも好きです。

あと、博品館で聴いた時の方が鉄誠道人視点、

今回の連続読みの方が正雪視点・・・という感じがしました。

あくまで正雪の物語の一部、というか。

個人的には博品館の方で鉄誠道人視点で聴いた時の方が、

「金さえあれば二親が俺を捨てたことを後悔する」

というセリフが響きました。

 

ちなみに前半2席は丸橋忠弥の義兄弟2人が正雪の一味に加わる話。

2人とも「正雪はなんか怪しい」とずっと拒否していたものの、

丸橋忠弥の説得もあり結局一味に加わるんですが。

松之丞さん、ここはダレ場です、とおっしゃっていて、

確かに鉄誠道人に比べると地味な話なんですが・・・

これがあるとないとで、実は最終日の感動が全然違うのです・・・

詳しくは5日目で。

 

【5日目】

「丸橋と伊豆守」

「奥村八郎右衛門の裏切り」

「正雪の最期」

「一味の最期」

 

いよいよ幕府転覆の計画実行・・・!

となるも、結局些細なことからガラガラと崩れていって

結局上手くいかなかった・・・という結末が楽日の4席。

「奥村八郎右衛門の裏切り」なんて、

ええ、これで、これで計画がダメになってまうの・・・?

とハラハラしつつ悲しくなってしまう展開・・・

 

そして「正雪の最期」。最期の正雪の言葉は

 

「真に、良き夢であった」

 

この言葉、5日通い詰めてこの物語を聴いた末に聞くと、

もう本当に刺さって刺さって・・・。

ええ、私達も真に良き夢を見せてもらいましたとも・・・

散り際も本当に見事で、あれいつの間に由井正雪がこんなに好きになってたの・・・

と涙涙の最期。

 

そしてこれで終わらない「一味の最期」。

捕まっても絶対に他の仲間を裏切らない、

家族まで巻き込まれても裏切らない一味の姿も本当に泣けるんですが。

最後に処刑されるのが丸橋忠弥と義兄弟2人・・・

そう、ここでの3人の会話、これは4日目で「ダレ場」と言われていた2席、

あれがあるからこそ無茶苦茶泣けたのです。

正雪は怪しい、と思っていた兄2人を積極的に一味に誘った丸橋忠弥。

そりゃこんなことになれば心の底から兄2人に申し訳なく思うでしょう。

けれど「義兄弟は生まれた時は違えど死ぬ時は一緒」と

昔話をしながら死んでいく兄2人と丸橋忠弥のシーンで大団円。

 

個人的に松之丞さんの講談で泣いたのはこれが初めてでした。

(泣ける講談といえば私の中では阿久鯉師匠)

あと特に一味の最期は松鯉師匠をなぜかとても彷彿させる気がして、

ああ松之丞さんてやっぱり松鯉師匠のお弟子さんなんだなあと感じました。

なんとなく、ですが。

 

「正雪の最期」も「一味の最期」も、連続物として一連の流れの中で聴いたからこそ

感極まるものがあったなあと思います。

 

 

 

はいそんなわけで何とか書きたいことは書き記しました5日分。

滅多にできない貴重な体験、無事通い通して本当に幸せでした。

残念なのは前半体調を崩してしまってたこと。万全で挑みたかった。

滅茶苦茶のど壊しててサイン会でもほとんどお声がけできず・・・

でも宇都谷峠の入ったCDは無事サインもいただきました!

 

 

さて来年は行けるのだろうか・・・状況が許すのだろうか・・・

これからも松之丞さん連続読み企画されるだろうし、

でもその時に自分が行ける状況かってわからない企画だよねこういうの。

なのでもし興味がある方は1度でも!

都合がつく時があれば参加されることをお勧めします。

私は来年以降どうなってるかわからんし、本当に行ける時に行ってよかった。

またご縁が巡って参加できる日が来ますように。

松之丞さんは同世代の推しだから、お互いがジジババになるまで地道に追っかけるよ。