幕が降りた後に

トレッキーなジャズピアニストによる、ありとあらゆる「舞台」の覚書。守備範囲は講談、ミュージカル、ライブ、映画、洋ドラ、雑多です。

神田阿久鯉独演会@須賀神社

先日12月23日、講談師神田阿久鯉師匠の独演会についに行ってまいりました。


阿久鯉師匠との出会いは、今年の3月。

神田松之丞氏のイベント「問わず語りの松之丞の会」に

ゲストとして出演していらしたのですが。


その時の「長門木村重成の最期」が本当に本当に素晴らしかったのです。

兜に焚きしめられた香の香り。

戦場に駆け出す木村重成の最期。

全てがリアルでドラマチックで、

物凄く完成度の高いドラマや映画のシーンが

脳内に再現されるような感覚に陥りました。


その後お目にかかったのはまたもや松之丞氏のイベント、

11月に行われた「まっちゃん祭り」での一席。

「徳川天一坊」の中の結構エッグいシーンのある一席を

まるでブラックユーモアのようにやってしまうw

またもや非常に印象に残ったのが阿久鯉師匠でした。


いやこれは独演会行くしかないでしょう。

と、私と一緒に阿久鯉師匠にハマった母が

早速独演会情報をゲットしたので行ってきました。


内容は「水戸黄門記」を読む、と。


水戸黄門


…って、あの人生楽ありゃ苦もあるあれか。

勧善懲悪の代名詞のあの時代劇か。

この印籠が目に入らぬかの助さん格さんのあれか。


うん…どうしよう…


全くもって興味ないわ…


…いやいやいや!

全くもって興味なかった赤穂義士伝、

講談で聴いたら面白かったじゃない!

偏見はいかんよ!なんてったって阿久鯉師匠だもの!

きっと面白い…筈…水戸黄門水戸黄門かぁ…


はい結論から言うと滅茶苦茶面白かったですよ。

ホント、講談を偏見から入ってはいけないとまたもや思い知らされましたよ。



一席目は、なるほど確かに黄門様の好々爺のイメージぴったりなお話でしたが、

所謂あの印籠を出して助さん格さんが悪を制す…

みたいな話ではなく。


黄門様が隠居後も毎日毎日何回も何回も街の様子を見に行くから

その度にみんな土下座しなきゃいけなくて畑作業が進まねぇよ!

という苦情を「尤もだ」と受け入れる黄門様、

最後は色々あって自ら農業を始める…というお話。

黄門様に苦情を言う農民やじべえのコミカルさ、

黄門様の人の良い徳の高い人柄、

楽しく引き込まれるお話でした。


そしてもう一席の水戸黄門記のお話が…

なんかこう、あの時代劇の水戸黄門観をがっつり覆されるお話でした…。


黄門様の隠居後に、黄門様の腹心が裏切りを企み、

それを黄門様が暴き、元々腹心だった部下を成敗する…

というお話だったのですが。


もう…これが本当に…

滅茶苦茶完成度の高い映画のクライマックスを観たような。

いや本当に、脳裏にぐわっとそんなシーンが浮かんでくる。

元々のストーリーそのものがとにかく哀しくも美しいのですが

それを見事に見事に語る阿久鯉師匠…。

阿久鯉師匠、こう、ストーリーの美しさも、

登場人物の感情も、どれもリアルに伝えて来られる方だと思いました。

この2つが重なってぐぐっと惹きつけられる。

凄く凄く魅力のある講釈師さんだと再認識させられました。

これいい例えかどうかわからんのですが、

元々完璧な脚本があって、

それを精巧な演出で素晴らしい役者さんが演じてらっしゃる…

その演出部分と役者さんの演技の部分を

語り一つで一人で完璧に担っていらっしゃる…

と表現すると、この魅力が伝わるだろうか…


そして水戸黄門に全く興味なかった私が

黄門様のファンになってしまう位、

水戸黄門記」は面白かったです!!

まさか水戸黄門で泣くと思わなかったよ…


あともう一席かけていらしたのが、

なんと赤穂義士伝の新作!

神田茜先生による「スキスキ金右衛門様」というお話w

イケメン岡野金右衛門が吉良邸の図面を手に入れる為、

大工の娘お艶と恋に落ち図面を手に入れる…

という話は元々赤穂義士伝にあるそうですが。

その元の講談のお話では「美男美女」の恋の話だそうなんですが、

この神田茜先生のバージョンは、

「お艶がもしもブスだったら」

という新作でしたww

超面白かったですww実は根多おろしだったそうですが…

言われるまでわからないよ!という位、

テンポの良い素晴らしい一席でした。

いやしかしそもそもの発想が面白すぎる…



そんなこんなで年末に阿久鯉師匠にどハマりしてしまいました。

マクラでは散々松之丞氏のお話もされて、

その日大成金だったのもあり、

「ここに来た方はチケットの取れなかった方ですね!」

とおっしゃったり、

NHKのポスターの写真が松鯉師匠よりも松之丞氏の方が大きいと不服だったり

かなりいじっていらっしゃいましたがw

でも弟さんのご活躍を見守っていらっしゃるんだなぁと思いました。


私のように松之丞氏から講談にハマった方、

もしもまだ聴いたことがなければ、

阿久鯉師匠はとてもお勧めです!

定期的に須賀神社でも独演会をしてらっしゃるようです。

私もまた行こうと思います。