幕が降りた後に

トレッキーなジャズピアニストによる、ありとあらゆる「舞台」の覚書。守備範囲は講談、ミュージカル、ライブ、映画、洋ドラ、雑多です。

神田松之丞新春連続読み「慶安太平記」その2

 

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ようやく「慶安太平記」本編、感想書きます。

とはいえ5日分を事細かに書くほどの文章力がないので、

一日ごとに簡単にまとめます・・・

 

【1日目】

(マクラ:A日程にして初日にしか来なかったのに朝日新聞に書評を書いた

矢野誠一氏にひたすらおかんむり。)

「正雪の生い立ち」

「楠木不伝闇討ち」

「丸橋忠弥登場」

「忠弥・正雪の立ち合い」

 

「正雪の生い立ち」、正雪の幼い頃からの有能of有能ぶりで

周りが感心するような描写が多い中、ただ一人だけ

「この者を傍においてはいけません」と進言する者が。

「正雪ってやばいやつなんじゃあ・・・」と感じさせる、

幕開けとしてとても面白い一席でした。

 

そして「楠木不伝闇討ち」が正雪のサイコパスぶり炸裂。

師範代やってる道場の師匠を殺す完全犯罪ぶりがえぐい。

あと一度振った女が「人の者になると惜しい」とほぼ強奪する鬼畜ぶり。

面白いくらいにやばい人物なのはわかった、

けどこの調子であと4日サイコパス物語が続くのか・・・?

 

と恐ろしくなってきたところでの丸橋忠弥関連の2席。

これは丸橋忠弥のキャラクターも相まって笑いどころも多い話だった。

良かったサイコパス連続5日読みではなかった・・・

これにて丸橋忠弥、正雪一味の仲間入り。

 

 

【2日目】

「秦式部」

「戸村丹三郎」

「宇都谷峠」

 

個人的に「秦式部」は色んな景色が目に浮かんで好きでした。

晴れた夏の日、群衆を前に秦式部が皿回しで雨を降らせる描写が凄く美しくて躍動的。

そして実は今で言う気象予報士的な知識のある秦式部を利用して

雨乞いの儀式をする正雪。降らなかったら切腹

なんでもできる超有能でサイコパスな正雪、

流石に雨がなかなか降らないと焦るんすね。

その人間らしさが垣間見えるのもこの話の好きなところ。

「戸村丹三郎」も最初笑えたかと思ったら凄く悲しくなるシーンもあり・・・

と面白い一席だったのですが、

個人的にこれはやばい一席だと感じたのが「宇都谷峠」・・・!

これは凄かった。もう本当に不気味で怖くて。

正雪出てこない話ですが!

後に正雪の仲間となる怪力僧の伝達が上野から京都までお金運ぶ話。

そこで甚兵衛という謎の男に出会い、その2人の道中を描いた話なんですが。

この甚平がもう不気味で怪しくてもう・・・

安倍川のシーン最高だった・・・

かと思えば後半松之丞氏の新作「トメ」の老夫婦みたいなの出てくるしw

(あれは「トメ」のカメオ出演だと勝手に思うことにしました)

元々有名なお話だったそうですが、連続読みの中で聞けてとても良かった。

 

【3日目】

「箱根の惨劇」

「佐原十兵衛」

「牧野兵庫(上)」

「牧野兵庫(下)」

 

どれも正雪が仲間を加えていく話なんですが、

それぞれの話で正雪の意外な一面が見られるのが個人的に好きでした。

「箱根の惨劇」で伝達の大食いぶりをびっくりしながら眺める正雪。

「佐原十兵衛」で夜桜を愛でる正雪。

「牧野兵庫」で書を愛で、そして同じ書を愛でた牧野兵庫を介抱する正雪。

この日一日で「正雪はやばいサイコパス」というだけでない、

色々な一面が見られたのがとても良かったし連続の面白さの一つなのかも。

しかしどの話でも「途中で登場人物の性格が変わる」という現象がある、と

松之丞さんもマクラでお話されていたんですが、

私は牧野兵庫の豹変ぶりが特にショックでしたよ・・・どうしてこうなった・・・

 

【4日目】

「柴田三郎兵衛」

「加藤市右衛門」

「鉄誠道人」

「旗揚げ前夜」

 

ついに来ました「鉄誠道人」。私はこれが聴きたくて来たのです!

去年の博品館での独演会でこの話を聴いてとんでもなく衝撃を受けたのが

この5日連続読みに参加したきっかけと言っても過言ではない。

話の内容はとんでもなくエグくて正雪のサイコパスぶりが一番際立つ話。

全身真っ白、所謂アルビノの僧、鉄誠道人は大層お金が大好きな坊さん。

そこに正雪が「人々を救うために焼身自殺をして、免罪符を売ろう」

と金儲けの話をもちかける。「もちろん棺桶に細工をして逃げられるようにする」

として、見せかけの焼身自殺の儀式を行うことになるが・・・

・・・結末はお察しください・・・

というとにかくとんでもなくエグイ話なのですが私は最高に好きです。

びっくりしたのは博品館で聴いた時は焼身自殺の儀式のシーンで

太鼓や三味線を使っててそれがかなり凝った使われ方してて、

そこに感動してこの話が好きになったのですが。

今回はなんと鳴り物なし!なのに同じくらい引き込まれる!!

どっちのバージョンもすごいしどっちも好きです。

あと、博品館で聴いた時の方が鉄誠道人視点、

今回の連続読みの方が正雪視点・・・という感じがしました。

あくまで正雪の物語の一部、というか。

個人的には博品館の方で鉄誠道人視点で聴いた時の方が、

「金さえあれば二親が俺を捨てたことを後悔する」

というセリフが響きました。

 

ちなみに前半2席は丸橋忠弥の義兄弟2人が正雪の一味に加わる話。

2人とも「正雪はなんか怪しい」とずっと拒否していたものの、

丸橋忠弥の説得もあり結局一味に加わるんですが。

松之丞さん、ここはダレ場です、とおっしゃっていて、

確かに鉄誠道人に比べると地味な話なんですが・・・

これがあるとないとで、実は最終日の感動が全然違うのです・・・

詳しくは5日目で。

 

【5日目】

「丸橋と伊豆守」

「奥村八郎右衛門の裏切り」

「正雪の最期」

「一味の最期」

 

いよいよ幕府転覆の計画実行・・・!

となるも、結局些細なことからガラガラと崩れていって

結局上手くいかなかった・・・という結末が楽日の4席。

「奥村八郎右衛門の裏切り」なんて、

ええ、これで、これで計画がダメになってまうの・・・?

とハラハラしつつ悲しくなってしまう展開・・・

 

そして「正雪の最期」。最期の正雪の言葉は

 

「真に、良き夢であった」

 

この言葉、5日通い詰めてこの物語を聴いた末に聞くと、

もう本当に刺さって刺さって・・・。

ええ、私達も真に良き夢を見せてもらいましたとも・・・

散り際も本当に見事で、あれいつの間に由井正雪がこんなに好きになってたの・・・

と涙涙の最期。

 

そしてこれで終わらない「一味の最期」。

捕まっても絶対に他の仲間を裏切らない、

家族まで巻き込まれても裏切らない一味の姿も本当に泣けるんですが。

最後に処刑されるのが丸橋忠弥と義兄弟2人・・・

そう、ここでの3人の会話、これは4日目で「ダレ場」と言われていた2席、

あれがあるからこそ無茶苦茶泣けたのです。

正雪は怪しい、と思っていた兄2人を積極的に一味に誘った丸橋忠弥。

そりゃこんなことになれば心の底から兄2人に申し訳なく思うでしょう。

けれど「義兄弟は生まれた時は違えど死ぬ時は一緒」と

昔話をしながら死んでいく兄2人と丸橋忠弥のシーンで大団円。

 

個人的に松之丞さんの講談で泣いたのはこれが初めてでした。

(泣ける講談といえば私の中では阿久鯉師匠)

あと特に一味の最期は松鯉師匠をなぜかとても彷彿させる気がして、

ああ松之丞さんてやっぱり松鯉師匠のお弟子さんなんだなあと感じました。

なんとなく、ですが。

 

「正雪の最期」も「一味の最期」も、連続物として一連の流れの中で聴いたからこそ

感極まるものがあったなあと思います。

 

 

 

はいそんなわけで何とか書きたいことは書き記しました5日分。

滅多にできない貴重な体験、無事通い通して本当に幸せでした。

残念なのは前半体調を崩してしまってたこと。万全で挑みたかった。

滅茶苦茶のど壊しててサイン会でもほとんどお声がけできず・・・

でも宇都谷峠の入ったCDは無事サインもいただきました!

 

 

さて来年は行けるのだろうか・・・状況が許すのだろうか・・・

これからも松之丞さん連続読み企画されるだろうし、

でもその時に自分が行ける状況かってわからない企画だよねこういうの。

なのでもし興味がある方は1度でも!

都合がつく時があれば参加されることをお勧めします。

私は来年以降どうなってるかわからんし、本当に行ける時に行ってよかった。

またご縁が巡って参加できる日が来ますように。

松之丞さんは同世代の推しだから、お互いがジジババになるまで地道に追っかけるよ。

神田松之丞新春連続読み「慶安太平記」その1

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講談は一話完結のお話だけでなく、

連続物といって、ドラマのように何話も続いて

1つのお話になっている作品が多いそうです。


普通の高座でかけられるような作品は、

大抵その連続物の中から面白いものを抜粋して読まれるわけですが。


ただ、やっぱり連続して聞くのが本来の在り方だそうです。


そして今をときめく講談師神田松之丞さん。

「慶安太平記」という読み物、全19席。

通して全部で約10時間分。

これを5日連続で読み通す、という企画をされました。


そしてチケットも5日通しのチケットしか用意されておりません。


つまりお客さんの方は

「慶安太平記」という壮大なドラマを

5日間池袋のあうるすぽっとまで通い

5日間夜な夜なお話の続きを聞きに行かねばなりません。


まあ…普通…ないよねこんな企画。


好きな舞台や映画を何回も見たくて通うとか。

それならまあ色んな方が経験あると思うのですが。


5日通わないと物語の全貌がわからないとか。

このご時世、やる方も凄いけど行く方も正気かいな、

と思いましたが案の定チケットは争奪戦でした。

みんなよく行くなぁ。いや私も行きますけれども。

そしてチケットもなんとか取りましたけども!!




さてこの「慶安太平記」というのはどんなお話か。

由井正雪という軍学者が三代家光の時世に

幕府転覆を図るというお話。

全19話、どんなお話があるのかというと、

由井正雪の生い立ちから始まり、

丸橋忠弥を始めとした優秀な人材を仲間にしていき

地位を築き金を集め最後は幕府転覆計画を実行…

大体こんな流れのお話です。


この由井正雪がまあまた魅力のある人間でして。

まず見た目が格好いいらしい。美形らしい。

そして何やらせても完璧。

武芸から華道やら茶道やら、何やらせても完璧とか。

また生まれながらに瞳が2つあるという、

天下人が持つ人相を持っていたそうです。

(豊臣秀吉もそうだったとか)


でも実は超絶冷酷非道。

当世風に言うサイコパスってやつでしょうか。

一見人を寄せ付ける魅力的な外面を持ちながら、

実は相当に残酷なことを平然とやりのけてしまう人です。


なんか今でも映画や漫画なんかの主人公かその敵にしたら

滅茶苦茶モテそうな人物設定ですよねぇ。

昔も今も人々が惹かれるキャラクターて変わらんのですかね。


そんな由井正雪の物語が5日間繰り広げられたわけですが…



…あまりにイレギュラーなイベント故、

ここまでで説明が長くなってしまったので

細かいお話の感想はまた分けて書きましょうかね…。

今回はブログも連続で行きますw




神田阿久鯉独演会@須賀神社

先日12月23日、講談師神田阿久鯉師匠の独演会についに行ってまいりました。


阿久鯉師匠との出会いは、今年の3月。

神田松之丞氏のイベント「問わず語りの松之丞の会」に

ゲストとして出演していらしたのですが。


その時の「長門木村重成の最期」が本当に本当に素晴らしかったのです。

兜に焚きしめられた香の香り。

戦場に駆け出す木村重成の最期。

全てがリアルでドラマチックで、

物凄く完成度の高いドラマや映画のシーンが

脳内に再現されるような感覚に陥りました。


その後お目にかかったのはまたもや松之丞氏のイベント、

11月に行われた「まっちゃん祭り」での一席。

「徳川天一坊」の中の結構エッグいシーンのある一席を

まるでブラックユーモアのようにやってしまうw

またもや非常に印象に残ったのが阿久鯉師匠でした。


いやこれは独演会行くしかないでしょう。

と、私と一緒に阿久鯉師匠にハマった母が

早速独演会情報をゲットしたので行ってきました。


内容は「水戸黄門記」を読む、と。


水戸黄門


…って、あの人生楽ありゃ苦もあるあれか。

勧善懲悪の代名詞のあの時代劇か。

この印籠が目に入らぬかの助さん格さんのあれか。


うん…どうしよう…


全くもって興味ないわ…


…いやいやいや!

全くもって興味なかった赤穂義士伝、

講談で聴いたら面白かったじゃない!

偏見はいかんよ!なんてったって阿久鯉師匠だもの!

きっと面白い…筈…水戸黄門水戸黄門かぁ…


はい結論から言うと滅茶苦茶面白かったですよ。

ホント、講談を偏見から入ってはいけないとまたもや思い知らされましたよ。



一席目は、なるほど確かに黄門様の好々爺のイメージぴったりなお話でしたが、

所謂あの印籠を出して助さん格さんが悪を制す…

みたいな話ではなく。


黄門様が隠居後も毎日毎日何回も何回も街の様子を見に行くから

その度にみんな土下座しなきゃいけなくて畑作業が進まねぇよ!

という苦情を「尤もだ」と受け入れる黄門様、

最後は色々あって自ら農業を始める…というお話。

黄門様に苦情を言う農民やじべえのコミカルさ、

黄門様の人の良い徳の高い人柄、

楽しく引き込まれるお話でした。


そしてもう一席の水戸黄門記のお話が…

なんかこう、あの時代劇の水戸黄門観をがっつり覆されるお話でした…。


黄門様の隠居後に、黄門様の腹心が裏切りを企み、

それを黄門様が暴き、元々腹心だった部下を成敗する…

というお話だったのですが。


もう…これが本当に…

滅茶苦茶完成度の高い映画のクライマックスを観たような。

いや本当に、脳裏にぐわっとそんなシーンが浮かんでくる。

元々のストーリーそのものがとにかく哀しくも美しいのですが

それを見事に見事に語る阿久鯉師匠…。

阿久鯉師匠、こう、ストーリーの美しさも、

登場人物の感情も、どれもリアルに伝えて来られる方だと思いました。

この2つが重なってぐぐっと惹きつけられる。

凄く凄く魅力のある講釈師さんだと再認識させられました。

これいい例えかどうかわからんのですが、

元々完璧な脚本があって、

それを精巧な演出で素晴らしい役者さんが演じてらっしゃる…

その演出部分と役者さんの演技の部分を

語り一つで一人で完璧に担っていらっしゃる…

と表現すると、この魅力が伝わるだろうか…


そして水戸黄門に全く興味なかった私が

黄門様のファンになってしまう位、

水戸黄門記」は面白かったです!!

まさか水戸黄門で泣くと思わなかったよ…


あともう一席かけていらしたのが、

なんと赤穂義士伝の新作!

神田茜先生による「スキスキ金右衛門様」というお話w

イケメン岡野金右衛門が吉良邸の図面を手に入れる為、

大工の娘お艶と恋に落ち図面を手に入れる…

という話は元々赤穂義士伝にあるそうですが。

その元の講談のお話では「美男美女」の恋の話だそうなんですが、

この神田茜先生のバージョンは、

「お艶がもしもブスだったら」

という新作でしたww

超面白かったですww実は根多おろしだったそうですが…

言われるまでわからないよ!という位、

テンポの良い素晴らしい一席でした。

いやしかしそもそもの発想が面白すぎる…



そんなこんなで年末に阿久鯉師匠にどハマりしてしまいました。

マクラでは散々松之丞氏のお話もされて、

その日大成金だったのもあり、

「ここに来た方はチケットの取れなかった方ですね!」

とおっしゃったり、

NHKのポスターの写真が松鯉師匠よりも松之丞氏の方が大きいと不服だったり

かなりいじっていらっしゃいましたがw

でも弟さんのご活躍を見守っていらっしゃるんだなぁと思いました。


私のように松之丞氏から講談にハマった方、

もしもまだ聴いたことがなければ、

阿久鯉師匠はとてもお勧めです!

定期的に須賀神社でも独演会をしてらっしゃるようです。

私もまた行こうと思います。



女優だけのシェイクスピア リア王@座・高円寺

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実は昔演劇を少々嗜んでおりました。
中高一貫校で5年間演劇部員をやっておりました。

どっちかというと役者より音楽制作を任される方が多かったんですが。

最後の最後に主役を演じたのがこの「リア王」でした。

(※女子校です)

少々嗜んで…という控え目な表現をしておいて何ですが、
特にコンクール出場なんかもしなかった割に
今思えば結構なガチ勢の集まる部活でした。
少なくとも一大イベントの文化祭前は全員ガチにならないと生き残れない…
といっても過言ではないレベルで毎日練習が続きました。

そんな中で最後の最後に演じた作品で思い入れもあるのに加え。

当時我々の演劇部で指導をしてくださっていた女優さん、
杉村理加さんがグロスター役で出演なさる、ということで
これは行かねばなるまいよ!!
というわけで速攻チケットを予約し本日行って参りました。

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主演は旺なつきさん。元々宝塚のご出身の方です。

女優さんが演じるリア王ってどんなんなんだろう…?
となかなか想像が出来なかったんですが、
素晴らしいリア王でした…。

決して「リア女王」でなく「リア王」でした。
女性で、あの男性の老王をあそこまで見事に演じられるなんて…

…10数年前に観て技術を欠片だけでも参考にさせていただきたかった…(ノД`)
たかが部活、されど舞台。
女性の身でどうやってあれを演じるのか…
物凄く苦労した記憶があります。

見事に演じていらした旺さん。
印象的だったのは、何かと怒り狂うシーンの多いリア王
声を荒げずにその怒りや狂気を演じていらしたのが印象的でした。 

あああこうやって表すんだ…
と、もう10年以上経ってるのに
どうしても演じた側目線の感想になってしまうのですが…

あと印象に残ったのはエドガー。
エドガーは途中で乞食に扮する役所なんですが、
ここまでトチ狂った乞食だと思わなかったですww
いやはや凄かった圧倒的存在感でした。

そして声優のくじらさんがオズワルド役で出ていらっしゃいました。
有名どころだと「銀魂」のお登勢さん役の方ですね。
悲劇の中で笑いが起きたのはオズワルドのシーン。
ほんのちょっとした台詞や仕草が
このシリアスな物語の中に一瞬の笑いを差し込んでおりました。
そして素人目線ながら、声の存在感が違う印象でした。

そして贔屓目に抜きにしても杉村理加さんのグロスター。
元々この話の中でグロスターというキャラクターはとても好きだったのですが。
善良であるからこそ騙されてしまう…
良き父でありながら息子に陥れられてしまう。
そんなグロスターをとても魅力的に演じていらして
どのシーンでも目の惹かれるキャラクターでした。

あとある種悪役的なエドマンド。
なんと可愛らしい雰囲気のエドマンド( ゚д゚)
なんかこう、少年が悪戯をする如くに父と兄を陥れていく…
ある種サイコっぽくて逆に怖かったですw
こんなエドマンドありなんや…(※良い意味で。とても良い意味で)

あと今回シェイクスピアの脚本をそのまま用いての舞台だったので
改めてシェイクスピアの書く台詞の美しさというか…
脚本そのものの魅力、物語そのものの面白さと普遍性、
というのを改めて感じました。
特にリアがコーディリアと再会するシーン。
お前はコーディリアか…?
と気付く前の長台詞がね…
じーさん、気付いてんのか?
コーディリアだってわかってんのか??
じーさん!正気か?正気に戻れ!じーさん!

気付いてたぁぁ(ノД`)ブワッ

ってなるんですよ…(伝われ)
凄く好きなシーンになりました。

演劇の古典作品って
演じ方演出の仕方が役者さん劇団さんによって
全然違ってくるのが本当に面白いですよね。
講談聴いてもそれは思ったけれども、
シェイクスピア作品なんて何百年単位で世界規模だもの。
最近演劇鑑賞からは遠のいていたけれど、
また色々観てみたいなぁ。


昔の思い出も相まって。
素晴らしい舞台が観られて幸せな心持ちです。


末廣亭11月下席千秋楽

今年の末廣亭11月下席には絶対に行くと決めていた。

そして出来れば千秋楽に行きたいとも。

 

これには少し理由がある。

 

まず私が初めて寄席に足を運び、初めて講談を聴いてハマったのが、

ちょうど1年前の11月30日だったから。

 

去年の今頃「昭和元禄落語心中」を観て、一度寄席に行ってみたいと思い、

予備知識が全くない状態でたまたま暇だった去年の11月30日。

 

わくわくしながら末廣亭に向かう途中、新宿三丁目駅末廣亭のポスターを見つけると。

そこに出演予定の方々が書いてあった。

そして見てみると。

 

トリの人始め「講談」の人が多い・・・

そしてトリの人は「長講 赤穂義士伝」と書いてある・・・

 

・・・やべぇ全く興味ないわ・・・

正直全く興味ないわ・・・忠臣蔵とか・・・

そもそも私落語聴く目的で行くつもりだったんだが・・・

え、ちょっと日を改める・・・?

 

と、本気で思いました。ええ本当にそう思いました。

 

が。思い立ったが吉日。

まあ落語家さんも出てるし・・・まあ行ってみるか・・・

 

と、予定通り末廣亭へと向かいました。

(今振り返るとここでの選択は人生最良の選択の一つだったと思います、ええ。)

 

そして入った途端に出ていらしたのが、

勢い良く笑いを交えながら「扇の的」をかけていらした鯉栄師匠。

そして中入り後に神田松之丞氏の「違袖の音吉」に一気に持っていかれ。

正直全く興味のなかった赤穂義士伝「荒川十太夫」、松鯉師匠の語りでじっくり堪能。

 

これが私の講談との出会いの日でした。

11月30日はそんな講談記念日でもあり、

今年もこのお三方が出られるから、というのもあるのですが。

 

もう一つの理由は先日神奈川県民ホールでの神田松之丞さんの独演会で、

松之丞さんの「荒川十太夫」を聴いたこと。

 

松之丞さんが「荒川十太夫」の冒頭を話始めた時に、

「あ!あの時の松鯉師匠がかけてた話だ!」というのはすぐに気づいたのですが。

とにかく印象が違う。

いや一年前だから単に私が松鯉師匠のバージョンうろ覚えなだけ??

松之丞さんは照明使ったりなんかして演出が違うから??

でもでも演出だけの問題???

 

思い出せんからもっかい松鯉師匠の「荒川十太夫」聴きに行こっと。

 

というのが今日行った理由です。

 

松鯉師匠の末廣亭11月下席の演目は予め公表されております。

「荒川十太夫」は討ち入りの後日談なので、確かに千秋楽にぴったり。

今年も千秋楽でやるよと発表されておりました。

 

 

というわけで夕方までに猛ダッシュで仕事を終わらせ

何とか鯉栄師匠に間に合い!

鯉栄師匠・松之丞氏共に堪能しまくり(こちらの感想は後述)

ついに松鯉師匠のきっかり一年ぶりの「荒川十太夫」。

 

 

やっぱりもう全体のムードから言って松之丞氏の「荒川十太夫」と違う。

いやそりゃ演者が違うんだから違うでしょ、と言ってしまえばそれまでなんだけど。

ただ一体何が違うのか、その正体が何なのか、

せめて自分なりの答えを出さないとなんだか気持ち悪い!

と今日はなんだか変な聞き入り方をしておりました・・・。

 

で、終盤で気づいたのですが。

これは完全に私のとらえ方でしかないので共感を得られるかわからないのですが。

 

一番の違いは「視点」なのではないかと思いました。

 

松鯉師匠の場合、あくまでずっとこの「荒川十太夫」の物語を

俯瞰しているような状態でお話されているような気がしたのです。

こう、空中からナナメ下を見下ろしているような、第三者的視点というか。

 

対して松之丞氏の「荒川十太夫」の印象は、

登場人物の目の前までぐぐぐっと観客を引き下ろしてくるような語りだったような気がします。

同じ地平で彼らの物語を目と鼻の先で見ているような感じ。

 

松之丞氏のその同じ地平で物語を見させるような語りは、

登場人物の心情がリアルにガツンと伝わってくるような感じがしました。

 

対して松鯉師匠の俯瞰的な視点からの語りからは、

この「荒川十太夫」という物語の美しさを感じられたように思いました。

 

あくまで個人の感想というか感じ方というか。

ただ、私なりの、私個人のその感じ方の違いの正体が見つかって、

なんとなくすっきりした思いでした。

ご本人様たちはそんなつもり一切ない、見当違いの感想かもしれませんが。

 

同じ話を違う噺家さんが話すのを聴き比べると面白い、

というのは落語の楽しみ方として聞いたことがありますが。

なるほどこういうことか・・・と納得した講談ファン2年目のスタートでした。

 

 

ちなみに他お二方の感想。

鯉栄師匠「任侠流山動物園」

ご本人開始早々このネタをかけたことを後悔してらっしゃいましたがw

私はこれが聴けてとてもうれしかった!です!

新作講談って初めて聞いたよ!そして実はこれタイトルだけ知ってたのですが

まさか動物たちの任侠ものだとは思わなかったww

けれど見せ場は古典の講談のやり方と変わらずでそれが素敵だなと。

 

松之丞氏「和田平助

今日この前に6席やったとのことで「もうどうでもいい」とお疲れモードww

のわりにマクラ超ノッてたのは流石だなと。

松之丞さんのマクラで久しぶりに大爆笑しましたww

本編もとにかく勢いと緊迫感のある話だったんですが、

家帰って講談入門読んだら「短くやろうというときにかける話」と。

なるほどだからマクラで延々木馬亭のインド人の話が続いたのか・・・。

 

こちらのお三方は今年は今日が聞き納めだなー。

まだ講談自体は阿久鯉師匠の独演会に年内行く予定です。

そして年明けは神田松之丞氏の「慶安太平記5日連続読み」。

こちら滅茶苦茶暗い話と聞いているので、

松之丞さんのお話で笑うのはしばらくラジオだけになるかな?

 

 

また来年も、再来年も。

松鯉師匠がご活躍のうちは、11月30日は毎年聴きにいけるといいな。

 

 

末廣亭11月下席3日目

友人が「昭和元禄落語心中」にハマったらしい。

 

実はこの漫画に私がハマったのが一年前。

あれを読むと、そしてアニメを見ると、とにかく寄席に行ってみたくなる。

 

そんなわけで去年初めて足を運んだ寄席が、末廣亭

ちょうどこの時期で、11月の下席でした。

この11月の下席では講談師の神田松鯉師匠が毎年赤穂義士伝をかけていらっしゃいます。

そんな前情報全然知らずに行って、以降講談の魅力にずぶずぶハマってしまった・・・

のが去年~今年にかけてのお話。

 

今年も絶対行くぞ!!と思っていたところで

友人が「昭和元禄落語心中」にハマった、となれば。

連れていくしかないでしょう。

沼に誘い込むしかないでしょう。

 

と、いうことで。行って参りました。

 

最近はお中入り後に出演される神田松之丞氏が大人気故、

(そもそも私も松之丞氏に思いっきりハマったクチですがその話はまた後日)

祝日だし開演前には行った方が良さそうかな~?

というノリで16:40頃に行ったら。

 

既に大混雑。

 

ギリギリ1階席には入れたものの、案内されたのは端の畳席、

既に2階席(めったに開放されないらしい)も開放・・・

松之丞人気やばい・・・

 

さてさて。お目当てだった神田一門の感想を少々。

 

・神田鯉栄 寛永宮本武蔵伝「狼退治」

個人的に今日一番面白かった!

去年も今年の7月も末廣亭で聞いて、

貫禄と愛嬌のある格好良い女性芸人さんだなぁとは思っておりましたが。

今日は客席を煽る煽るww

「松之丞の時はもっと拍手するんでしょ!」と今日の満席をネタにしつつw

何故高座にマイク(ソニー製)が置いてあるか?今日まで知りませんでしたw

狼たちの会話のシーン、あれは鯉栄さんのアレンジなのかな??

いやとにかく笑ったw来年は絶対鯉栄さんの独演会行こう。

 

・神田松之丞 「扇の的」

今日は畳席の前の方だったので舞台袖がとても良く見えまして。

出る直前に「プレッシャーだなあ・・・」と苦笑いの松之丞さんが見えましたw

私の友人もでしたが、「今日は初めて寄席に来たという人も多いようで・・・」と入り、

「これは挑戦です」と、敢えて言い立ての多い「扇の的」を。

 

私個人は今年の6月に国立演芸場で松之丞さんの「扇の的」を聴いたのですが。

この時と一番違ったの、なんだったろう・・・

と後から色々考えたのですが。

 

結論:客席。

 

あの日は梅雨も梅雨の真っただ中の平日の昼。

松之丞さんもマクラで「雨の中お運びありがとうございました・・・むしろ、何故来たのw」

とおっしゃる勢いw

日時と、雨と、あと場所もあるのかなあ?お上品な高齢層が多く、

基本ずっと客席が静か目な印象でした。

 

もちろん客席のテンション関係なく松之丞さんの「扇の的」、良かったんですが。

今日は客席もノッていて、私も遠慮なく笑いまくれました。

笑いを取る場面ももちろん好きなのだけれど、

那須与一が祈る場面の松之丞さんの気迫、今日とても引き込まれたなあ。

 

客席の空気って、演者さんにももちろん影響するんだろうけど、

御客同士でも結構影響するんじゃないかなぁ、と感じました。

 

ちなみにその後の桂幸丸師匠、

思いっきり松之丞さんを腐してネタにしていらっしゃいました・・・w

狙ってなのかわからないけれど、テンションの落差がw

幸丸師匠、とても面白かったです。

 

神田松鯉 「大石東下り

正直赤穂義士伝とか全く興味がなかったのですが、

去年の松鯉師匠の「荒川十太夫」、今年の神田松之丞講談漫遊記での堀部安兵衛三作で

どんどん赤穂義士伝の魅力に吸い込まれていっております。

 

忠臣蔵って要はみんなで敵討ちして最後みんなで切腹して美談になった話っしょ?

要は忠誠心スバラシイ!な話っしょ?」

 

くらいの認識でいたんですけれどね。

そんな超身も蓋もない認識でいたんですけどね。

 

まだ赤穂義士伝極々一部しか聴いてないけれど、

そうじゃなくて、一人一人の人生のドラマだとか

仇討ちに至るまでの間に色んな逸話があったりだとか

「敵討ち」そのもの以外に面白い話がいっぱいあるんだな・・・?

と徐々に気づかされているここ最近です。

 

今日の「大石東下り」はまさにそう思わされた話だった。

 

敵討ちのために江戸に行く大石内蔵助、敵討ちに行くのバレたらまずいから偽名を使う

→泊まった宿で偽名の張本人に会ってしまう

→さあどうする!

 

というお話だったのですが。

その緊迫感だとか、大石内蔵助が正体を明かした時の二人の無言のやりとりだとか・・・

ストーリー自体が物凄くドラマチックで、

そして松鯉師匠はその物語を本当に魅力的に伝えるなぁと感じました。

 

何か特別派手なことをやるわけでもない。笑いを取るわけでもない。

けれど講談の物語そのものの魅力を最大限に伝えられる人なんじゃないかと。

 

友人も松鯉師匠にとても引き込まれていたようです。

良かった趣味に付き合わせた甲斐があった。

 

 

以上お目当ての神田一門の感想でした。

 

他に印象に残ったのは

・桂伸べえ「寿限無

寄席超初心者なので生で寿限無を初めて聞けて良かった。

マクラが初々しさ満載の印象だったのに、ネタ自体はとても面白くて。ギャップが。

三遊亭円雀

新作落語で名前がわからないのだけど、所謂新作落語でここまで笑ったことはなかった・・・

桂幸丸

松之丞氏の後のテンションの落差wwwそしてひたすら昭和歌謡のモノマネwww

流れ的なのも含めて爆笑でした。

 

 

千秋楽もとてもとても行きたい!!

けれど席が残ってるうちに仕事が終わるのか?

平日とはいえ金曜夜だし心配・・・

いや立ち見でもいい。千秋楽は色々行きたい理由があるのです。

その話は行けたらまた今度。